みなもに佇むサフォーク
みなもに佇むサフォーク

みなもに佇むサフォーク

作者:中谷健一さん
Instagram:@cr_satoken
X:@aro999jp
Web:https://kuma.pb.design/
Shop:https://www.etsy.com/shop/kenichinakaya/

初めてこの作品を見た時「こんな表現がこの世にあるのかあ…」と、クリエイティブに感動しました。

水面にいないのに、まるでそこだけ水面が発生してるように見える。

もし部屋に飾ったら、さまざまなものが静止している中で、この作品の周囲だけがゆらゆらと動きを持ち、ものすごい視覚的スパイスを与えてくれるだろうなあと思いました。

最初は鏡か何かを使っているのかな?と思いましたが、実際には「現実側」と「水面側」で分解できる作りになっていました。

細い足だけでつながっているところが、2つの世界の境界をよりはっきり感じさせる所以かもしれません。

作者様のHPを拝見したところ、
「水を見つめる羊をモチーフにした、現代社会における自己と他者、現実と幻想の境界を探求した詩的な彫刻です。」
とありました。

この説明を読んで、子供の頃のことを思い出しました。

周りの子たちの学校での様子を見て自分と比べ、「みんなと同じゲームが欲しい」「土日に子どもだけで遠出したい」「○○ちゃんみたいにたくさん服やシールを買ってほしい」などと親にねだっていました。

そのたびに「よそはよそ、うちはうち」とたしなめられ、何も言い返せませんでした。

今の子どもたちは、学校での様子だけでなくSNSでも同級生の日常を覗けるので、まるで他者のすべてが見えるような世界に生きています。

自己と他者を比較し、「なぜ自分はみんなと違うんだろう」「みんなに合わせなきゃ」と考える回数は、きっと昔よりもずっと多いのかもしれません。

私はSNSが大人になってから普及した世代ですが、それでも他人の生活を見ると、自分と比較して虚しくなることがあります。

だから、友人らとつながっているアカウントを見るのをやめました。

マジョリティに属していない自分を、自分で責めて悲しくなりたくない。

でも完全なマイノリティになりたいわけでもない。

一人は寂しいから、どこか“コミュニティ”という名の群れには属していたい。安心したい。

そんな気持ちがあります。

この羊もきっと、

群れで生きる自分。
普通の色ではない自分。
このままでいたい自分。
白くなりたい自分。

——そんな色んな自分を抱えながら水面を見つめ、この世界で他者と生きる意味を考えているのかもしれません。

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